浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~
 それこそ、彼を傷つけてしまう。

 だから、これはついていい嘘よ。ええ。つかなきゃならないの。

「クククーーーー」

 心の中で必死に言い訳を連ねているところに、ロボが変な鳴き方をした。

 ハッと肩を見下ろすと、モフモフの中ににんまりと笑顔が見える。

 ええっ?やはりこの子って、わたしの心の中がわかるの?

「ロボ、いい子ね。またクッキーね。ほら、食べてね」

 手にしている本を膝の上に置き、その手でクッキーを数枚わしづかみにした。それをロボの笑顔に押しつけた。

(いいわね?これをあげるから、心の中をのぞかなかったことにしてよね)

 眼力(めぢから)だけで、モフモフに圧力をかける。

 数枚あったクッキーが消えた。

 取引は成功ね。たぶん、だけど。

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