浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~

余韻に浸っているから邪魔しないで

「クミ?その、白ユリはどうだった?」

 アレックスが、ローテーブルをはさんだ向こう側から尋ねてきた。

「ごめんなさい。余韻に浸っているところを邪魔されるのが大嫌いなの」

 彼に視線を向けることなく言った。

 感動しているところを邪魔されるのは、ミステリー小説の真犯人をバラされることの次に腹立たしい行為である。

「す、すまない。じゃあ、台所を借りてディナーを作っているから。余韻に充分浸れたら、台所に来て教えてほしい。ロボ、行こう」
「クーン」
「ちぇっ。わかったよ。彼女といっしょにいたいんだよな。彼女が余韻に浸っているのを邪魔をするなよ」

 アレックスが書斎から出て行った。
 ロボは、わたしのお尻にモフモフの体をぴったりくっつけて眠っている。

 夕陽が沈み、窓の外も書斎も薄暗くなるまで余韻に浸っていた。


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