浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~
「ちょっと待ってくれ。まさか、ぼくが?それだったら、きみは悪い奴やクズ野郎どもを殺しているわけかい?リアルにナイフを閃かせて、寝台の上で寝首をかくの?」
「そんなこと、あるわけないじゃない。わたし、黒バラみたいに身体能力が高いわけじゃないしセクシーでもないわ。というよりか、他人(ひと)の命を奪うだなんて、そんな勇気はひとかけらも持ち合わせてはいない」
「だったら、ぼくも同じさ」

 彼は、美貌に気弱な笑みを浮かべた。

「ぼくだってそうさ。宮廷楽士セシリオみたいに器用じゃないし、テクニックを持ち合わせてはいない。なにより、彼のように大勢のレディを愛することなんて出来ない。一人しか愛せないよ」

 書斎に沈黙がおりた。

 にわかには信じられないわ。
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