浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~
 彼の胸の上に手をつき、彼の真っ赤な顔を見下ろしている。

 訂正。確信犯ってわけじゃないけれど、彼の胸に思いっきり飛び込んだらこうなることはわかっていた。

「ただいま」

 そのとき、ほとんどの作家が用いるであろう展開になった。

 アニバルとカルラである。彼らは、いままで帰宅する気配など微塵もなかったにもかかわらず、いきなり帰宅して書斎の扉を開け、わたしたちの「いまにもやりそう」的な場面を目の当たりにしたのである。

「なんてこった」
「お嬢様っ!いくらお嬢様でも……」

 アニバル、カルラ。二人とも、わかっているわ。だから、何も言わないで。

 恋愛小説のドッキドキの展開は、ラブコメタッチで終わりを迎えた。
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