浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~
「やっぱりね。やっぱりそうだったのね。ちょっと、わたしの心を読んでいるんでしょう?失礼すぎるわ。そんなの、着替えを覗き見るのと同じことよ」
「なんだと?着替えを覗き見るのと同じにするなっ!これは、わたしの神聖なる力の一つだ。それを、欲求不満野郎の行為と同じにするなどとは……」
「おあいにく様。そういうのは、わたしに言わせれば覗き見する欲求不満野郎の言い訳にすぎないわ。さも自分の行為は敬虔なものだって正当化しようとするのよね。他人(ひと)の心を覗くって、ほんっとにいやらしいことよ。あなただって、いまわたしに心の中を覗かれたらいい気はしないわよね?」
「この力が、おまえごときに扱えるものかっ」
「やだっ!怒鳴ったりなんかして。人間(ひと)って都合が悪くなるとすぐに怒ったり怒鳴ったりするけれど、魔獣も同じなのね」
「だから、魔獣ではない。聖獣だと申しているだろうがっ」
「ほら、また怒鳴った」
「あの……。おれのこと、忘れているんじゃ……」

 巨大モフモフの向こうからベレー帽の男が何か言ったけど、およびじゃないわよね。いまは、巨大モフモフと話をしているんだから。

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