浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~
「いったい、なんだっていうんだ?」
「お嬢様、心臓が止まるかと思いました」
「キュッキュッキュッ」

 アニバルとカルラとロボは、なぜか怒っている。

「クミ、どこかケガでもしたのかい?」

 そして、アレックスは見当違いの心配をしている。

「忘れていたわ。原稿よ。「白ユリの楽士」シリーズの八巻の原稿と、九巻のプロット。殿下、ほんとうにごめんなさい。わたしったら、うっかりしていたわ」
「そんなこと?いや、それはいいんだよ。クミ、きみが無事だった。ぼくらも無事だ。原稿なんて、どうにでもなる。元原稿は、王都の出版社の金庫の中にあるしね。プロットだって、ちゃんと頭の中に入っている」
「ほんとうに?殿下、大丈夫なのね?」
「ああ、無事に危険を脱したことの方がずっといい」

 アレックスは、馬をよせてきた。左手をわたしへ伸ばしてくる。

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