浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~
 それはともかく、ムダに上半身を見せびらかしている男は、自称「慈善活動家」でありビクトリアという名だった女を抱きしめ、その唇に口づけをした。

 彼の上半身で、大粒の汗が陽光でキラキラ光っているのがここからでもわかる。

「ハニー、戻ってこないから様子を見に来たんだ」

 上半身裸野郎は、彼女の唇から自分のそれをはなすと甘ったるい声でささやいた。

 うわぁぁぁぁぁ……。

 いくら話の展開上必要であっても、大勢の読者たちが期待していようと、すくなくともわたしはこういうシーンは書けそうにないわ。

 こういうわざとらしくって「バカじゃないの」って言いたくなるようなシーンは、アレックスのジャンルになるわよね。

 しかも、ささやいてからまたやりはじめた。

 口づけを、である。下品な音まで立てて。

 目のやり場に困る、ということはない。

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