浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~
「あああああああああっ!」

 それをぼーっと見守っていて、とんでもないことを思い出した。だからつい、小さく叫んでしまった。 

「お嬢様、またですか?」
「クミ、いいかげんにしろよ」

 カルラとアニバルに、また怒られてしまった。

「すっかり忘れていたのよ。以前、ビクトリアって、ほんとうはそんな名前じゃない彼女のことを、探偵を雇って調べてもらったって言ったわよね?その結果をきいたとき、探偵に金貨を余分に渡してお願いしておいたの。グレンデス公爵家がどうかなって、セシリオが路頭に迷うようなことがあったら、彼女の居場所を調べて教えてあげてって。あっ、違うわよ。彼への同情とか憐憫から頼んだわけじゃないの。わたしのところに来られては困るでしょう?すくなくとも、わたしの居場所の方がすぐにバレるんですもの。それだったら、彼女の方に行ってもらった方がいいから。もっとも、フツーなら元夫が離縁した元妻を頼るはずはないんだけど。もしも、の場合に備えただけだった。でも、ほんとうにもしもの場合になったわよね。予期しなかったのは、ここにわたしまで登場してしまったってことよね」

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