浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~
「ほんと、知らなくってごめんなさい。わたしも予約してみるわ」

 はやいとこ逃げだしたい。そろそろカルラが図書館に迎えに来る。彼女に頼まれた料理の本を探さなければ。

「約束ですよ」
「かならず読んでください」
「すぐに予約した方がいいですよ」

 彼女たちの熱心な勧誘をふりきり、ようやく料理本の書架にたどりついた。

 えーっと……。

 明日、隣国モリーナ王国から「黒バラの葬送」シリーズの担当編集がやって来ることになっている。

 おもてなしをする為に、図解入りのレシピ集を頼まれている。

 背表紙の文字を追っていると、それっぽい本が見つかった。

 本は分厚く、背表紙の文字は大きくて太い。こういう料理本は、たいてい図入りで説明されている。

 視線を落として胸元の本を抱え直しつつ、目測で目当ての本へ手を伸ばした。

 すると、指先が何かにあたった。

 その何か、というのが本ではないことは言うまでもない。

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