浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~
 それだったら、だまされ利用され、自分からすべてを奪った女に蹴られたり踏みつけにされて死んでしまった方が、彼的には本望じゃないかしら?

 彼のすぐ側まで近づき、ドベーッと転がっている彼を見下ろした。

 せっかくの美貌は、見る影もない。

 やはり、心から気の毒とかかわいそうとかは思えない。いまとなっては、「ざまぁないわね」とか「自業自得よ」とかも思わない。

 はやい話が、作中のどうでもいいキャラクターの人生の末路的なものを読んでいるみたいな気持ちくらいにしかならない。

「ああ、そこにいたのか」

 元夫を冷めた目で見下ろしていると、エントランスの扉の向こうにベレー帽の男が現れた。

 外はすっかり静かになっている。
 フリオの手下対ベレー帽の男たちの勝負は、ベレー帽の男たちの勝利に終わったに違いない。

 ベレー帽の男は、左右に私兵を侍らせ、屋敷内に入ってきた。
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