浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~
「ぼくは違うレシピ本にしますから、どうぞ」

 その声は、テノールで耳に心地いい。

 思い出すだけで虫唾が走るけれど、元夫のセシリオのとってつけたようなソプラノボイスとはまったく違う。

「わたしこそ、別のレシピ本でも問題ありませんので。お持ちください」

 彼に譲ろうと体ごと向き直った。

 心の中で、どんな容貌か楽しみにしつつ。

「……」

 なんてことなの!

 まんまよ、まんま。下手な恋愛小説のまんまだわ。

 美貌がこちらを見ている。ちょうど窓から陽光が射し込んできている。まるで、このワンシーンに花を添えるかのように。

 カッコいい男がキラキラしているわ。

 ベタすぎて、胸元の本を取り落としてしまった。




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