浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~
 真ん前にあるアレックスの美貌に、自分の顔を近づけてみた。

 それこそ、鼻の頭と鼻の頭がチョンと触れるくらいまで。

「してもいい?」

 アレックスに、周囲にきこえないほどの小声で尋ねてみた。

「え?ええっ?も、もちろん」

 彼、喋りすぎたのね。声がかすれている。

「じゃあ、目を閉じて」

 小説あるあるの逆をいってみることにした。

 男性が女性に目を閉じさせたり、女性が気をきかせて目をとじるのではなく、である。

 アレックスが素直に目を閉じた。

 その瞬間を狙って、そっと触れた。

 彼の唇に。やさしく触れた。

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