浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~
「いたっ」

 彼の体がピクッとした。

「乾燥しているのね。唇の皮がピロッて剥けているの。それがいま、すっごく気になって。あっ、血が。ごめんなさい。こんなに大きな皮ですもの。血が出て当然ね。痛いの痛いの飛んでけー」

 唇に滲む血を、ペロッとなめた。

 自分のささくれとかちょっとした傷に、ついしてしまうように。

 まっ、だいたいの傷はペロッでどうにかなるのよね。

 その瞬間、両肩からアレックスの手が離れた。

 その彼の手が、彼自身の唇をなぞっている。

 彼は、さらに真っ赤になっている自分の唇をこわごわなぞっている。

「心配しないで。そんなに血は出ていないから。なめればどうにかなる程度よ。ほら、行くわよ」
「ク、クミ、ちょっと待って」

 エントランスの外に向かって歩きはじめると、アレックスが追いかけてきた。

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