浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~
「はい、セシリオ様。よろこんで離縁を受諾いたします。あたらしい妻のビクトリアとどうかおしあわせに」

 いままで一度だって見せたことのない満面の笑みを浮かべ、ぽっちゃりな体型用のドレスの裾を上げて優雅に挨拶をした。

 そして、さっそうと歩きはじめた。

 自分の部屋に向かって、ではない。

 外に向かって。

 部屋に置いている物など、何一つ持って行くつもりはない。だから、荷物をまとめる必要もない。

 わたしってば、最後まで嫌な女だったわね。悪妻だったわ。

 さようなら、セシリオ。何も知らないまま自滅なさい。そして、このアラニス帝国の公爵家筆頭のグレンデス家を潰してしまうといいわ。

 屋敷を出て門へと歩きながら、笑わずにはいられなかった。
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