浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~
「よおっ」

 普通の声量だったら充分届くまで距離が縮まったとき、四人の中の一人が手を上げて声をかけてきた。

 さっと四人を観察する。

 四人ともこざっぱりしたシャツで、その上にベストを着用している。ズボンは黒であったり紺であったりバラバラである。四人の内の三人は狩猟用の帽子をかぶっていて、一人はベレー帽をかぶっている。

「なんだ、女か」

 さらに近づくと、先程のとは違う男がつぶやくように言った。

 まあ、そうよね。

 女性はランニングなんてしない。それから、こんなに髪の毛が短くない。

 どこからどう見ても男よね。

 でも、心の中で言わせてね。

 女で悪かったな、くそったれ。

 わたしの小説のヒロインであるエルバ・マルドネス、通称黒バラだったら、「くそったれ」のジェスチャーも添えて、声に出して言ったわよ。

 心の中で言いながら、彼らの前で立ち止まった。

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