浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~
「名乗るほどの者ではないわ」

 顔だけうしろへ向け、黒バラがだれかを助けたときに言うのと同じ台詞を返した。

 黒バラと同じように爽やかな笑みを添えて。

「ちっ!すかしやがって。何様だ」

 残念ながら、現実は厳しすぎた。

 小説の中では心から感謝しまくられるシチュエーションも、現実には傲慢ですかした女になるらしい。

 ぶん殴ってやりたい衝動を抑えこみ、ランニングを再開した。

 今朝は、いつも通りの距離は走れないわね。

 だから、分岐点から別荘までいつもより速度を上げて走った。
< 76 / 330 >

この作品をシェア

pagetop