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「ありがとう」

と言って僕は一枚つまみ取る。

「そういえば、あんたの名前をまだ訊いてなかったな」


「ヒルカワってんだ」

彼が答えた。


ヒルカワ? どこかで聞いた覚えがある。

どこだろう……どこかで確かに耳にした……。


「ところでお前さん、故郷に女はいるのかい?」

ヒルカワが言った。


「あ、ああ……。帰国したら結婚を申し込もうと思ってる女がいる」

僕はみちるの顔を思い浮かべた。

みちると話したい、みちるを抱きしめたい――。

思慕の念が洪水のように押し寄せてくる。


「そいつは諦めたほうがいいな」

と、ヒルカワが言った。
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