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機関士のヒルカワだ。


僕は思わず舌打ちをした。

艦内でもっとも関わり合いたくない危険人物、それがヒルカワだった。

奴に関しての黒い噂は絶えない。

リーヴストン号に搭乗して間もない頃、何人もの女性クルーたちが奴の魔の手に落ちた。

おかしな薬を使って意識が朦朧としている相手をレイプする、という人外の行為を繰り返していたのだ。

マーラも奴に二度犯されていた。

ヒルカワという男は紛れもない鬼畜だった。


「どうしたの? 怖い顔なってるよ?」

ミチルの呑気な声。

「ん……そうかい? なんでもないさ、ミチル」

ミチルに視線を戻し笑顔で答える。

ここのところ大人しくしているヒルカワだが、気をつけなければならない。

奴をミチルに近づけてはいけない。

絶対に――。


ヒルカワはグリーンティを飲み干してから席を立った。

トレイをカウンターに戻し食堂を後にする。


出ていく時、僕を見て笑ったような気がした。
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