キスだけでは終われない
壁に手をついて彼女を俺の中に囲い込む。困った顔を見せたかと思うと俯いてしまい、その後の表情が窺えない。
彼女は俺とのことは想い出だと言った。でも、俺のことを忘れていないとも言っていた。今は忘れられていなかったことに一縷の望みをかけてみよう…そう思った。
何度も夢にみていたカナが目の前にいるというのに。髪にも頬にも手を伸ばせば触れる位置にいるというのに…何もできなかった。
困らせたい訳でもない…どうしたら彼女を自分に振り向かせることができるのか。あの後、すぐに連絡することができていたら、彼女の隣には修一ではなく俺が立てていたのか?
後悔は無数にあったが、悔いても時は戻せないのだから、彼女をもう一度この手に抱くためにできることをするだけだ。