キスだけでは終われない
「1ヶ月かもう少し前って言ってたか。親父さんに食事に付き合うように言われて、行った先で彼女に会ったって。まっ、見合いっていうほど畏まったものではないけれど、いわゆる顔合わせだったと…」
さらに修一がどんな感じでカナと食事をしていたとか、カナに対する様子を聞いて、とても冷静ではいられなかった俺はウィスキーを呷った。
「それで、なんでお前が香苗さんのこと…そんなに聞いてくるんだよ。いったい何があった?」
真剣な口調になった浩介から続けられる。
「二人は政略的な出会いだろうと思うけど、真面目に付き合ってると思うぞ。修一からはかなりの独占欲を感じたし、お前が横から手を出したりしたら、普段は温厚な修一でも相当怒ると思うけどな」
日本に戻って間もなくというところで見合いをしたのか。彼女はそのこと知っていたから逃げたのか。あの時、自分が繋ぎ止められなかったことがこれ程悔やまれるとは考えてもみなかった。