キスだけでは終われない
揺らめく心とそれぞれのアクション
修一さんのパートナーとして参加したパーティで、柾樹と再会するとは思ってもみなかった。
柾樹の行動力や自信、更には人を惹きつける魅力がどこからくるものなのかわかった気がした。
彼の周りには綺麗な女性たちがたくさんいるのに、なぜ私に声をかけてきたのか不思議でならない。
どうして…わざわざ会場から出てあんなところで私のこと待っていたりしたの?
なんで…あんなに怒っているような、辛そうな顔を見せるの?
修一さんに家に送ってもらっている間もずっと考えていたのは柾樹のこと。気がつかないうちに疑問が口から小さくこぼれ落ちていた。
「…どうして……」
「ん?何か言った?」
いけない。まだ修一さんの車の中だったことを思い出し、慌てて首を横に振り意識を現実に戻す。
「な、なんでもないです。明日からヨーロッパに行くって言っていましたよね?よく行かれるんですか?」
「たまにかな。でも、距離があるから行くと長くなる」
暗い車内、運転中の修一さんは正面を向いたままなので、その表情はよく見えない。
「せっかく香苗さんをパートナーとして紹介できたのに、このタイミングで2週間ほどヨーロッパを周ってこなくてはいけないのが辛いな…」
「…2週間ですか…長いですね」
「仕入先や製造工場などの視察もあるし、結構、移動に時間を取られてしまうからね。長くなるのは仕方ないと分かっているけど、会えない時間が長くなるのはやっぱり寂しいな」
「……はい…」