キスだけでは終われない

その日は彩未ちゃんと電話を切った後、修一さんからも電話があった。

「香苗さん、こんばんは。今、大丈夫?」

「あ、はい。大丈夫です」

「土曜日はお疲れさまでした。水族館はたくさん歩いたし、パーティとか気を遣わせちゃって疲れちゃったよね」

「水族館はすごく楽しかったです。パーティは何回か参加してだいぶ慣れてきたと思っていたんですけど、やっぱりちょっと疲れちゃったみたいです。ご心配おかけしちゃいましたよね?」

「うん。帰り際の香苗さんが少し元気がなさそうだったから、心配だった」

「もう、大丈夫ですから気にしないでください」

「よかったよ。あっ、ごめん。このあと視察ですぐに行かなくちゃいけないんだ。でも、声が聞けて安心した。また、時間ができたら電話するよ」

「あ、お仕事頑張ってくださいね。じゃあ、おやすみなさい」

「うん…おやすみ。ゆっくり休んでね。じゃあ」

電話を切る時にクスッと笑ってたのは、まだ向こうは昼間で仕事中の人に、私が「おやすみなさい」と言ってしまったからだな。

咄嗟に自分のことを考えてしまうのはまだまだ子供だからなのかな…。余裕がないし、本当にダメだな…。

この数日間、私は考えるたびに負の無限ループ状態になっている。

明日、アヤちゃんと話したら少しはすっきりするのかな…。

「自信のない頃の自分に戻ってしまったみたい…」

大きなため息が漏れた。
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