キスだけでは終われない

「そんなにさりげなく助けて、見返りも求めずに去っていくなんて…ちょっとヒーローみたいじゃない。素敵な人だったんでしょう。で、どんな人だったの?」

「正直慌てて顔なんてよく見てないし、はっきりとは覚えてないの。背は高かったし、綺麗な人だったと思うけど…」

「綺麗って男の人よね?それって格好いいじゃなくて?」と確認される。

焦って話す私に微笑みを返してくれる彩未ちゃんは本当の姉のよう。きっと顔が赤くなっているに違いない私は居たたまれなくなり私は目線を外すと、気づいていないかのように普通に話を続けられた。

「まぁ、今回のような人たちばかりではないと思うし、せっかくだからこのままの感じで仕事にも行くようにしたら、自然となれるんじゃない?それに素敵な出会いもあるかもしれないじゃない?」

「会社にこの格好で行くの?!ムリムリムリ~当分は無理」

「無理じゃないでしょ。うちの会社じゃあ地味にしてる方が目立つでしょう」

確かにアパレル会社なんだから事実なんだけれど、その一言がまた私を慌てさせる。

今のままではお見合いをしてもお祖父さまに恥をかかせてしまうかもしれないけど、具体的に何をしたらよいのか悩んではいた。

本音を言えば恋愛の先にある結婚に憧れる。お見合い相手の男性と恋愛結婚ができるなら理想的なのにとも考えていた。
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