キスだけでは終われない
マスカルポーネとフルーツをたっぷり使ったデザートでおなかが一杯になった頃に、心配そうな顔をした彩未ちゃんから言葉が続く。
「香苗。いつまでも昔のことに囚われていても仕方ないんだよ。こんなに綺麗になったんだから、もっと自信を持ってね」
「でも…どうしたら自信なんて持てるようになるかも想像できなくて…」
「基本仕事以外は引きこもっていたからね。まずは外に出ること。もっと自分に磨きをかけることが必要かもね」
「磨く?何を??」
「例えば、今日美術館で心を磨いたでしょ。それからエステで体を磨いて、綺麗な洋服を身につけて自分を輝かせるのよ。それか、新しいことを始めるのもいいかもよ。そうしたら自然と自分に自信が持てるようになるかもしれない」
「…新しいこと…か。そんなこと考えてなかったから全然イメージできないのよね…」
「休暇を取って旅行でもしたらどう?私が一緒にどこか行ってあげようか?」
「それは心強いけど…彩未ちゃん今、忙しいでしょう?」
「そうだった…。新しいブライダルの企画が始まるし、私が行こうとすると半年は先になるな。それに一人で行く方が自分を見つめ直すにはいいのかな…」