キスだけでは終われない
じっと見られていて落ち着かないまま視線をさ迷わせていると、彼が「さあ、行こう」と、笑顔で手を差し出した。
「あの…。どこに…でしょう?」
戸惑う私の手を引いて、隣接しているショッピングセンターのお店に連れていかれた。
「どんな服が好みかな」
「いえ、弁償とか結構ですから」
「そういう訳にはいかないよ。君のその素敵なワンピースを汚してしまったのは俺だし、同じものはここにはないと思うから、好きなもの選んでよ。ほんの気持ちだから、ね」
「…… 」
有無を言わせてもらえなくて無言になってしまう。
「黙ったままで服も選ばないなら、俺に選ばせて。君にプレゼントしたいと思えるものを勝手に選ばせてもらうよ」
「えっ。あっ、あの…」
「いいよね」
顔を傾けなんとも言えない笑顔で自信ありげにいいか、と聞いてくる強引な彼に俯きながら首を縦に振っていた。