キスだけでは終われない
彼はかなり強引ではあるが、いちおう私の意向も聞いてくれていた。手を引かれ歩いていると有名なブランドショップに着いた。戸惑っているうちに彼が店員と話しはじめ、ワンピースを3点ほど持ち、試着室へと案内される。
1着目を着たところで彼に見せることになり、試着室から出ると
「いいね。素敵だよ。でも、こっちも着てみようか」
と2着目も見せる。
「うーん。さっきの方が似合っていたかな。次ね」
「はぁ……」
結局持ち込んだ3着すべてを着て見せることになった。
「いいね。素敵だよ。とても似合っているね。では、これを着ていこう」
彼が選んだ服は普段着としても着られそうな、シンプルなラインのラピスラズリ色のワンピース。生地も縫製も良いものだと分かる。スクウェアネックになっているので、私のつけていたピンクトルマリンのネックレスがよく映えて見える。気がついた時には、その男性は会計を終えていた。