キスだけでは終われない
男性からこんなに色っぽい顔で見られることなどなかったので、胸が熱くなった。
忙しない胸の反応にもう私の心臓が壊れてしまいそうな気がしてきた。
「あの、お酒お好きなんですか?」
「嗜む程度にだけど、嫌いではないね。まあ、甘い酒はあまり飲まないかな」なんて口端を上げて笑う顔が艶っぽくて様になっている。
「ああ、シンガポールスリングは甘いですもんね。私は甘いお酒じゃないと飲めません。ビールも苦くて、実はあまり得意ではないんです」
「さっきのワインは甘くなかったけど大丈夫だったの」
「先ほどのワインはフルーティーでさっぱりしていたので飲みやすかったです」
「甘いお酒の中にはアルコール度数が高めのものもあるから、男と飲むときは注意した方がいいよ。君みたいに綺麗な子は酔わせてみたいと考える男がたくさんいそうだ」
「そ、そんな男の人にあったことないですよ。私、こう見えてすごく地味な暮らししてますから…」
自信がない自分が出てきそうになり、言葉が尻窄みになっていく。
「そう?さっきも自分磨きの旅とか言っていたけど、これ以上磨きをかけたら極上の女性になってしまって、逆に高嶺の花になりそうだね」
「全然…そんなんじゃない…です…」
やはり見かけだけ頑張ってみても中身が追いついていってないな…。そんな風に思ったらテーブルに置かれたグラスに目線を向けてしまう。