キスだけでは終われない

私が物思いにふけっていると「違うカクテルも飲んでみるかい」と声をかけられた。

「そうですね。でも、何を頼んだらよいのかわからないんです。飲みやすそうなお薦めのカクテルってありますか?」

「じゃあ、俺が選んでいい?」

「甘いのでお願いします」

「了解」と、微笑んでバーテンダーに注文をしてくれる。
そして、スクリュードライバーが置かれた。

「オレンジジュースみたい。甘くて、美味しいです」

一口飲んだところで彼に言うと、彼だけでなく目の前のバーテンダーがニコリと微笑んでいた。

「一応アルコールの割合を減らしてもらったけどウォッカベースだし、アルコール度数もほどほどだから気を付けて飲んでね」

もう少しこの素敵な男性と一緒にいることで自信が持てるようにならないかと考えてしまう。それに万が一酔っぱらっても滞在先のホテルだから部屋までは戻れるだろうし、なんて考えていた。

ここが日常からかけ離れた空間だからか、いつになく自分ではないみたいに男の人と会話ができていて、カクテルも飲み干してしまった。

この人のおかげ?お酒のせい?
いつもの自分では考えられないくらい、大胆になれるかもしれない。

私は目の前にいる極上の男性にすっかり酔ってしまったようだった。
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