キスだけでは終われない
名前なんて教えずに別れるつもりだったのに…。
「カナ、可愛い名前だね。俺はマサキ。名前を呼んで…」
「マサキ…」
私が彼の名を口にすると彼の手が私の後頭部に回り深い口づけが再開される。角度を変えて近づく彼の唇から舌が口内に入ってくる。
立っていられなくなったところで彼は私の膝裏に手をかけ、横に抱きかかえ寝室へ行き、私をベッドの上に座らせる。
彼の大きな手が私の頬に触れる。
ドキドキするのはお酒のせいなのか、この人になのか、これから起こることなのか分からない。
寝室の窓からは輝く月が見えていた。
彼がジャケットを脱ぎながら再び唇を重ねてくる。キスさえ不馴れな私は彼の口づけに応えることが精一杯で、呼吸がうまく出来ずにいると
「カナ。好きだ。初めて君を見た時から、ずっと忘れられなかった」
ずっと?今日会ったばかりなのに?そう疑問に思うものの、また彼に口を塞がれてしまうと何も考えられなくなる。
月明かりを浴びる彼に酔わされ、気持ちのコントロールを失う。彼に触れてほしいという思いが溢れてきて、ただされるがままになる。
そして、彼が買ってくれたワンピースのファスナーが下ろされる。いつの間にか下着も脱がされ、恥ずかしくなり自分の手で胸元を隠すと手を取られる。
「綺麗だ…カナのすべてを見せて…」
窓から差し込む月明かりだけで部屋は薄暗いのに、彼の真剣な表情が見える。