キスだけでは終われない
カーテンの隙間からの光を感じて目を覚ますと、昨夜の彼…マサキの腕の中にいた。
しばらく温もりを感じていた私だったが、だんだんと意識がはっきりとしてきてハッとした。
「…あれ…わたし…ここ…どこ?」
彼を起こさないように静かにベッドから抜け出ると、床に散らばっている服を拾い着る。
体に感じる違和感が昨夜の情事が夢ではないと物語っていた。
昨夜のことを考えると顔を会わせることが気まずく感じる。とにかくここを出ないと、そう思ってバッグを持って部屋を飛び出した。
扉が閉まりオートロックが掛かるとその部屋には入れなくなる。これで本当にお別れだという事実に胸がチクリと痛んだ。
廊下を歩きエレベーターで移動し、一晩過ごした部屋から自分の宿泊していた部屋へ戻る。
何かに満たされたような不思議な感覚があった。
シャワーを浴びた時に見つけた彼に付けられた赤い印が夢ではなかったと教えてくれた。自分の腕で自分の体を抱きしめ昨夜の記憶を辿っていた。
今までの自分を彼が変えてくれたのかもしれない。これからはしっかり前を向いていかなくちゃ。