キスだけでは終われない
降り積もった記憶と後悔
俺は初めて自分が欲しいと願っていた女性と夜を過ごせた充実感で溢れ、幸せな気持ちでぐっすり眠れた…はずだった。
しかし、目が覚めたら隣で寝ていたはずのカナが消えていた。
いったい何が起きたのかと慌ててベッドから出て部屋の中を探してみるが、彼女はいなかった。
「服もバッグもない…か…。やっと気持ちが通じたと思ったのに…。」
こぼれ落ちた言葉はショックのあまり続かない。
ハァーと深く息を吐く。呼吸すら忘れてしまうくらいショックでしばらくベッドに座ったまま立ち上がれずにいた。
彼女に会いたくて忙しい最中に何度も日本に戻り、横浜のホテルから美術館の辺りを探し歩いたりしていた。
そう、うまくは会えないか…。
何度そう思ったことだろう。
あの日の記憶がこんなにも鮮明に残ってしまうとは思いもしなかった。