キスだけでは終われない
言っていて虚しくなるが、事実なので素直な気持ちを伝える。

「だから、まずは彩未の所に行って、誰もが振り返って見たくなるような女に生まれ変わってくればいい」

「私、彩未ちゃんみたいに美人じゃないし。彩未ちゃんの所に行ったから何が変わる訳でもないし…。彩未ちゃんと私じゃ全然違うじゃない」

「子供の頃はお前たちは姉妹に間違えられるくらい似ていたんだ。大丈夫だ。彩未も『いつまでも暗い顔して、閉じ籠っているのは良くないから、昔の様におしゃれしたら良いのに』と言っていたぞ」

「はあ…。彩未ちゃんにもう話してあるってこと?当事者の私を無視して?」

「あぁ、彩未が近い内に連絡してくれと言っていたぞ。ちゃんと連絡するんだぞ」

「私には私のペースがあるんだから。もう勝手なことしないでよ」

と言ってはみたけれど、当然聞く耳のない祖父には効果はなく、いつ彩未ちゃんの所に行くとか、いつ祖父の紹介する人と会うとかの話は具体的にはしないままその日は退室した。
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