キスだけでは終われない
今思えばあの日あの時に彼女に一目惚れしたんだ。
この後、しばらく俺の心の中に残る彼女の印象とこの手に触れた感触が忘れられなくて、連絡先を聞きそびれたことを後悔した。
まぁ、あの時に連絡先を聞いたら、俺の方が不審者になっていたとも考えられるので、あの時はそれで良かったんだと思っていた。
でも…もう一度会いたい…そんなことを思える女性は彼女が初めてだった。
その女性と日本から離れたここシンガポールで再会できるとは思ってもみない嬉しい出来事だった。
昨日の出逢いはあまりにも突然でなんとか彼女と話すきっかけを作りたくて、彼女が自分の座っていた席の横を通ろうとした時に、わざと立ち上がり彼女に接触した。
結果、彼女が持っていたお茶が彼女の服にかかってしまい、弁償するという口実を作り彼女に服をプレゼントする話をきっかけに夕食の約束までできた。
彼女との繋がりがようやく掴めたと感じた。作戦は成功だった。