キスだけでは終われない
誰かとではない…俺と一緒にいることで嬉しいと思って欲しかった。
一度でも彼女の甘さを味わってしまったら当然それだけで終われるわけはなく、部屋まで連れてきてしまった。
初めて知った抑えられない感情に支配され、彼女を部屋へと連れていき扉を閉めると同時に抱きしめキスを深めた。初めはキスさえ戸惑いを見せていたが抱き抱えてベッドに下ろした時には俺を受け入れてくれて、互いを映す瞳を絡ませると自然と求めあった。
気持ちが逸り、理性を飛ばして感情のままに抱いてしまうなんてことも彼女が初めてだった。
彼女とひとつになれた時は嬉しすぎてどうにかなってしまいそうだった。とにかく彼女に夢中になった。そして、最初の男になれた喜びは何とも言えない幸福感に包まれた。
その夜、俺は酒ではなく彼女に酔ったんだろう。
彼女の吐息のすべてを飲むように何度も何度もキスをした。
「カナ。カナ。…カナ」
名前を呼べることが嬉しくて名前を何度も呼んだ。