キスだけでは終われない
乗り越えた過去と悩ましい未来
日本に帰ってきてスマホの電源を入れる。スマートフォンの画面を見ただけで日常が戻ってきた気がする。メッセージを確認していると彩未ちゃんから電話がかかってきた。
「もしもし香苗、無事帰って来た?」
「もしもし。彩未ちゃん、無事に日本に着きました。ただいまです」
「今どこ?」
「まだ羽田だよ。これから帰るね」
「うん、気をつけてね。まっすぐに帰ってくるなら、ランチを適当に買って家にいくけど、どうする?」
「まっすぐに帰るけど、彩未ちゃん忙しくないの?」
「香苗に会いたいから行くのよ。いろいろ聞きたいし、だから大丈夫。じゃあ後でね」
「彩未ちゃん、朝早くからありがとう。じゃあ後でね」
電話を終えるとスーツケースを受け取り、家へと向かう。
飛行機の到着時間を伝えておいたものの、これから家に向かおうというジャストなタイミングで連絡をくれるあたりが、彩未ちゃんが我が社でも有能なマーチャンダイザーであることを証明しているみたいだ。
「彩未ちゃんってば流石だわ」と感心してしまう。