キスだけでは終われない
祖父のしたり顔を見て状況を考えると、これはお見合い、ということなんだろう。
私がいつまでもお見合いについて返事をしなかったから、強行手段に出られた訳だ。
お祖父様を軽く睨んで見るが全く堪えている様子はなく、優しく微笑まれてしまった。
お祖父様たちとの食事が終わる頃、お見合いのお決まり文句が飛んできた。
「さて、そろそろ食事も終わるし後は若い二人で話すといい」
状況に追い付かないまま、食事の味も内容も分からないまま終わってしまったというのに、お祖父様はこの初めて会った男性と私を二人きりにしようとしているのだ。
私はこんな状況が初めてのことで、対応出来ずに固まっていると、横に立った片山さんが声を掛けてくれた。
「香苗さん、もし良ければ僕と夜景が綺麗なラウンジでも行きませんか?ここからはそんなに遠くないので、お酒が飲めなくてもノンアルコールカクテル等もあるから十分に楽しめると思いますよ」
綺麗な笑顔でそう声をかけながら手を差し出される。一瞬戸惑いはしたものの、お祖父様から向けられる「行ってこい」という無言の圧力を感じ、彼の手を取った。