キスだけでは終われない

その次の水曜日の夜に片山さんからまたメッセージが届いた。

『また会いたいんだけど、週末は忙しい?』

片山さんに会いたい気持ちは正直にいうと半分半分だった。しばらくメッセージとにらめっこした結果を送信した。

『是非。よろこんで』
という言葉とうさぎがお辞儀をしているスタンプも送る。

すぐに既読になり、削除もできない事態に悩んでもいられず、スマホを見つめていると片山さんからの電話に慌てて出る。

「もしもし、香苗さん。今大丈夫?」

「あっ、大丈夫です」

「良かった。突然ごめんね。メッセージ見たら嬉しくて、思わず声聞きたくなっちゃって電話しちゃったよ」

「えっ…あぁ、すぐに既読になったのでメッセージが返ってくるのかと思っていたんですけど…電話だったのでビックリしました」

「驚かせちゃったの?」

「えぇ、こういうの慣れていないので…」

「そっか。僕が香苗さんの初めての彼ってことになるのかな?」

「…ぁ…。あ、あの週末なんですけど、どちらに行けば…?」

「うーん。どこか行きたいところはある?」

「…思いつきません」

「じゃあ、僕が連れて行ってあげたいところでいいかな?」

「はい。お任せしてもいいですか?」

「了解。金曜日は香苗さんの会社に迎えに行けそうもなくて駅で待ち合わせでもいい?」

「駅ですね。わかりました。よろしくお願いします」

「こちらこそ。じゃ、19時に。おやすみ」

「おやすみなさい」

電話を切るとベッドに入り、金曜日のことを考えているうちに眠気に襲われてしまった。
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