キスだけでは終われない
変わった自分と変わる周り
金曜日、片山さんと待ち合わせの場所へ行く。
会おうと言われて簡単にOKしてしまうようなこんな私でいいのか…と考え歩いているうちに、待ち合わせ場所に10分ほど早く到着してしまった。
ただボーとして片山さんを待っていると、見知らぬ二人の男性が前に立ち声を掛けてきた。
「ねえ、彼女さぁ、一人?」
そう、もうあの頃の私ではない。横浜で同じように声を掛けられた時はどうしてよいのか分からず、ただ通り過ぎようとして手を掴まれてしまった。でも、今はちゃんと言える。
「いえ、人と待ち合わせています」
「じゃあさ、一緒に待っててあげるからお友達がきたら一緒にご飯でも食べに行こうよ」
何を勝手なことを言っているのか理解できない私は断ることしか出来ないが、ここはひるまない。
「無理です。ごめんなさい」
そうは言っても離れていってはくれなさそうで困ってしまう。
二人は私を挟むように立ち、「そんなこと言わずにさ」と言いながら、私の手を掴んできた。
振りほどこうと手を挙げると、そこにまた別の男性から声を掛けられる。
「香苗、遅くなってごめん。こちらは知り合い?」