キスだけでは終われない

「僕は今日は車だからアルコールは飲めないけど、香苗さんは何か飲む?」

「いえ、私もノンアルコールの飲み物で」

「遠慮しなくていいのに」という彼の言葉に「もともとお酒はそんなに飲みませんよ」と笑顔で返す。

「そうだったね」

私たちが話していると人が近づいてくる気配を感じた。

「よっ、お二人さん。今日は修一が来てるんだ」

「浩介。お前もこんなところに顔出すなんて珍しいな」

「今日は親父も兄貴も他に予定があってさ。しかたなく俺が来たってわけ」

二人の会話に参加できずにいると、佐伯さんがこちらに話しかけてきた。

「高梨さん、こんばんは。今日も可愛いね。二人とも周りの目を集めて目立ってたぞ。修一がしっかりしてないと、横から姫を攫ってく奴が出てくるかもしれないぞ」

「確かに…。でも、そんなことを言ってくるなんて、お前が狙ってるんじゃないのか?」

「そんなことないよ。それより、柾樹のお祖父さんに挨拶行こうぜ。こういう場所に慣れなくて、俺一人だと心配だったんだ」

「あぁ、そうだな。明日、朝早いから今日は遅くまでいられないし、先に挨拶を済ませておこう」

二人について私も一緒に先ほどお話したお祖父さんにお祝いの言葉を伝えた。
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