更生係の憂鬱生活
更生係はいつ辞めたって構わないんだけどね。
ちゃっかり条件をつける私に、奏は苦笑した。
「…真面目だなぁ、澪は。
まぁでも…うん。
わかった、もう持ってこないようにする」
割とすんなり、受け入れてくれたな。
奏は、校則を破る問題児ではあるけれど、反面、素直で良い子なのかもしれない。
このまま、“更生ルート”へ向かってくれ。
そのまましばらく話していたら、奏は思い出したかのように言った。
「…あ。
あと、代那のこと、ありがとね」
『え?』
ありがとう…って、なんのこと?
「喧嘩、止めてくれたんでしょ?」
『…あぁ、うん』
忘れもしない衝撃映像だった、あれね。
別に、感謝されるほどもないと思うけど…。
奏は、明るく笑って、「澪のおかげで、代那のキレる回数減ったんだよ」と嬉しいことを言ってくれた。
…私のおかげ?
「だから、ありがとう」
心から微笑む奏に、私は得も言われぬ感情を抱いた。
何だろう…心が温かい。
奏からの“ありがとう”は、何時になく心に残っていた。
ー…奏、“更生ルート”へ一歩進む。