冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
実の兄なら、最近の弟の様子やら噂もよく知っているだろう。
ミリアは期待に目を輝かせた。
「あのっ、それでは――」
思わず前のめりになった時、不意にマントが目の前で舞った。
割り込まれたのだと気付いたのは、大きな背中が立ちはだかったからだ。見上げてみるとそれはアンドレアだった。
「――兄上、彼女は俺の妻です。まだ婚姻成立も済んでいませんので、必要以上の触れ合いはご遠慮いただけばと思います」
彼の横顔から見える赤い瞳は厳しく、震え上がりそうな声を聞いてミリアは身を竦めてしまった。
彼はなんだか怖い雰囲気だったが、エミリオは平然と笑った。
「あはは、知ってるよ。初夜をすっぽかしたのは有名じゃない」
アンドレアはふいと踵を返して答えず、ミリアの手を取った。
「あっ、あの」
「お前たちは付いてくるな」
声をかけようとしていたカイたちが、すぐさま口をつぐんで立ち止まった。
戸惑っている間にも、ぐんぐん歩かれてしまった。
「ど、どこへ行くのですか?」
尋ねてもアンドレアは答えてくれない。
やがて、次の廊下の角も曲がって彼が一つの部屋の扉を開けた。そこは侍女が使う備品室のようだった。
替えのシーツやテーブルクロスも畳まれて、棚に整然と並んでいた。アンドレアはそこにミリアを入れると、自分も入室して扉をしめる。
ミリアは期待に目を輝かせた。
「あのっ、それでは――」
思わず前のめりになった時、不意にマントが目の前で舞った。
割り込まれたのだと気付いたのは、大きな背中が立ちはだかったからだ。見上げてみるとそれはアンドレアだった。
「――兄上、彼女は俺の妻です。まだ婚姻成立も済んでいませんので、必要以上の触れ合いはご遠慮いただけばと思います」
彼の横顔から見える赤い瞳は厳しく、震え上がりそうな声を聞いてミリアは身を竦めてしまった。
彼はなんだか怖い雰囲気だったが、エミリオは平然と笑った。
「あはは、知ってるよ。初夜をすっぽかしたのは有名じゃない」
アンドレアはふいと踵を返して答えず、ミリアの手を取った。
「あっ、あの」
「お前たちは付いてくるな」
声をかけようとしていたカイたちが、すぐさま口をつぐんで立ち止まった。
戸惑っている間にも、ぐんぐん歩かれてしまった。
「ど、どこへ行くのですか?」
尋ねてもアンドレアは答えてくれない。
やがて、次の廊下の角も曲がって彼が一つの部屋の扉を開けた。そこは侍女が使う備品室のようだった。
替えのシーツやテーブルクロスも畳まれて、棚に整然と並んでいた。アンドレアはそこにミリアを入れると、自分も入室して扉をしめる。