冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
「どうして兄上と? あんなに話している君は初めて見た、兄上とは仲がいいのか?」

「はい……?」

離宮から出ない引きこもりの姫なのに、交流なんて取れているわけがない。

「いえ、偶然ぶつかりそうになっただけです、けど……」

ぐっと目を細めた彼に覗き込まれて、言葉が詰まる。

「本当か?」

「ほ、本当です。それで話すことになったので、あなた様のことを尋ねて――」

「それは聞こえたから知っている」

眼前からじっと見つめられて、ミリアは大変落ち着かなかった。先程まで笑顔のイケメン王子、続いては顰め面も美しい軍人王子だ。

勘弁して欲しいとミリアは思った。

案外良識人、という最近のイメージのせいだろうか。彼にそうされると、なんだかどきどきして徐々に顔が熱くなってくる。

(だって彼、結婚した姫にいちおう悪いと思って、毎日花とかクッキーとか持って来てくれているんだもん……)

そわそわして顔を後ろに引いたら、アンドレアが気付いたみたいに背を起こした。

けれど、目は離さず手もがっちり掴んだままだ。

「あ、あの……?」

じっと見下ろす真剣な目に動揺する。

「俺のことなら、俺に尋ねるといい。兄上が魅力的なお人だとは分かっている。もし目の前で惹かれていくなどとあっては、耐えられない」

「……はい?」

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