冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
不意に手を引っ張られ、彼の腕が腰に回ってきて引き寄せられた。気付いた時には胸の中に閉じ込められていて、妙な奇声を発してしまった。

「ひょえ!?」

身じろぎした瞬間、抑え込むように彼の腕が強くなる。

「あ、あの、殿下っ?」

密着のせいで、心臓がばくばくしている。

わけが分からない。肩口に顔を埋められていて、男の吐息を感じるのもミリアの身体を硬直させていた。

首元でアンドレアの顔が少し動き、捕まれている手ごとびくっとした。

首の匂いを嗅がれているみたいに感じた。疑問を覚えた次の瞬間、ふにゅっとした感触がした。

(……ん? 今の、何?)

二秒ほど、本気で考え込んだ。

だが、ちゅっと吸われてミリアの考えは終了する。キスをされているのだ。うなじにまたしても唇が触れて、慌てた。

「え、えっ、何をしているんですか!?」

「匂いを上書きしている。このフェロモンが、兄上と接して出たものだとたしら許せない」

(フェロモンッ? フェロモンって何!?)

香りみたいなものだろうか。

そんな戸惑いは、正面から抱き締めたまま彼に持ち上げられて途切れる。

「えっ? 何してるんですか!?」

びっくりしたが、アンドレアは答えずに歩く。

彼が向かったのは、シーツが置かれた場所だった。どさっと押し倒されて、さすがのミリアもぎょっとした。

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