冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
「……や、やっぱり、発情があるんだ」

読んで衝撃を受けた。獣の性質を持った獣人族は、年頃になると異性のフェロモンを嗅げるようになるという。

それは相手からのアピールのようなもので、どきどきすると出てくるとか。

(私、どきどきしてた……?)

そこにもミリアは大変混乱した。思い返してみると、たしかにこれまで感じたことのない胸の高鳴りがあった。

そう自覚した一瞬後、彼女は見事に顔がぼんっと赤くなった。

(うわ……うわあああぁぁ! 恥ずかしいっ、覚えがある! そのせいで殿下が触りたくなって発情したのっ?)

ミリアはたまらず顔を両手で覆い、ベッドに転がってごろごろしまくった。

めちゃくちゃ恥ずかしい。叫びたいけれど、ここでやったら姫の異常だと思って兵が確認しに来ても困る。

ミリアがどきどきしたのは、アンドレアが急に抱き締めたりするからだ。

胸板とか、自分よりも大きな身長とか、急に密着されたらさすがのミリアだって意識してしまう。

(そうっ、きっとそのせい!)

こんなに心臓が痛くなって顔が熱くなるとか、経験にない。なのでミリアはそう自分に思い込ませることにした。

救われたのは、本があったことだ。

発情、とか恥ずかしくてカイたちに尋ねられる内容ではない。顔にかぶせていた手の指を開いて、開かれたままの本をちらりと見る。

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