冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
【獣人族にとって、気持ちが定まっていないのに発情し、触れることはマナー違反】

平たいページの続きにあった『作法について』が目に入った。

それを見て、ハタと冷静さが戻る。

アンドレアは唐突に離し、目も合わせられない様子で詫びていた。考え込んでいた顔は自身にとっても不意打ちだったから……?

「……とすると、不覚にも発情しただけなんだよね? つまり事故でいいんだよねっ?」

そう自分を納得させてしまいたい。

今は、身代わりで半年間を過ごすという役目に集中しなければならないのだ。

不覚にもどきどきしてしまった過去も帳消しにしたい。アンドレアを思い出すと、昨日以上に心臓が変で挙動不審になりそうな気がひしひしとする。

「だめだっ、考えごとの限界が来た!」

もういっぱいいっぱいになった途端、ミリアは両手を伸ばして起き上がった。

(そうだ、癒されてこようっ。まずは癒しが欲しい)

考えを放棄し、もふもふと戯れることを決めた。

ずっと引きこもっているのもカイたちを心配させるだろう。最悪なパターンを考えたくなくて、彼女は振り払うように生活魔法をかけベッドから飛び降りた。

そのまま『胡蝶の間』を飛び出し、向かい側の本殿へと走る。

「というわけでっ、ブラッシングに行きたいと思います!」

ばんっと扉を開けるなり宣言する。

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