冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
「まぁ、それはないと思いますよ。獣人族相手でも、さすがに抱っこまでは嫌がったりしますし」

「そうなの?」

カイの言葉に、ミリアは小首を傾げた。その間にも引き渡しを行う係の男たちの脇を、翼が生えた聖獣がさーっと走り抜けていった。

全員が目で追う中、『次は僕!』というようにミリアの膝の上にもふっと座る。

連れてこられたばかりの他の中型犬サイズの聖獣たちも、彼女のもとへと引き寄せられるように集まって周りで腰を下ろした。

「……随分懐くなぁ」

ブラッシングでテンションが上がって、膝の上で暴れている聖獣をどうにか押し留めながら騎士が言った。

「うん。しかも、大人しい」

カイが口にすれば、全員が納得した様子で頷く。

ミリアの膝の上に座った聖獣もまた、姿勢をキープするための手間もかけさせず自分からブラッシングされていた。

それ様子を、手を組んでうっとりと眺めていた係の男が身体をねさらせる。

「もしかしたら王女殿下は、神獣たちに好かれる伝説の女神なのかもしれませんねぇ」

「女神? あの、随分大袈裟な気が……?」

「そういう言い伝えがあるんですよ。特殊なフェロモンを持っていて、『その女神、万物のあらゆる神獣に愛される』とね。まさに王女殿下は、我が国の殿下に嫁ぐべきお人だったのかも! そうだったらロマンですなぁ!」

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