冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
「悩んでいるというか、判断に迷っているというか……いや、可能性があったとしたらまずいから考えたくないだけなのかも」

国交問題、身分詐称、刑罰――そんな単語がずーんっと重くのしかかってきた。

「うぅっ、せめて流刑で……!」

ミリアは、膝の上で「わふん?」と持つ神獣をたまらず抱き締めた。

「ほほほ、誰も君を咎めたりしないよ~」

「おじいさんは事情を知らないからそう言えるんですっ」

抱き締めているもふもふが大変気持ちいい。そして今、自分は大変不安だ。ミリアは混乱しているのを自覚していた。

そう話す様子を、カイちたと係の者たちが大変はらはらと見守っている。

お爺さんが「ふむ」と考えて帽子の下を少し掻く。

「不安事かな?」

「うん、まさにそうです……とっても個人的なことなの。ごめんなさい、八つ当たりみたいに叫んじゃって」

ミリアは、抱き締められて嬉しそうな神獣にもふっと口元を押し付けた。

アンドレアが何をしたいのか、わけが分からなさすぎて困っている。そして、彼が結婚への考えを改めたらどうしよう不安になっていた。

(私は身代わりであって、姫様じゃない……)

別人だとバレる前に、きっちり離縁して国に帰らなくてはいけないのだ。

その時、目の前の神獣を大きな手が撫でる。

「君は、ここへたった一人で来た。その勇気を誇るといい、きっと悪いようにはならない」

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