冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
二つほど警備を超え、離宮も担当しているという侍女が付いて、同行していた騎士から案内役を代わった。

「こちらが姫様の暮らす『胡蝶の間』になります」

離宮には、向かい合わせで二つの建物が存在していた。

二階建ての大きな建物が『本殿』と呼ばれている場所で、ミリアの生活空間にとあてられたのは一階建ての別邸のような建物だ。

アンドレアが主に使っているという立派な本殿と向かい合わせに造られており、蝶がたくさんいる美しい庭園を挟んだ先にあった。

(それで建物名に蝶が付くんだなぁ……ここが、今日から私の基地になる場所、か)

離宮があるのは、厳重な警備の先にある王族プライベート区だ。

アンドレアの個人私有地となっているため、物々しい護衛もいなくて清々しい。

「姫様には小さな部屋かと思われますが、どうぞご容赦くださいませ」

「へ?」

一人暮らしにしては贅沢な、と思っていただけにミリアはびっくりして侍女たちを振り返った。

「本来は妃の私室兼寝所ですので、もし何か不便がありましたら、殿下に本殿も立ち入れるようご許可をいただき――」

「いえいえっ、大丈夫ですわ!」

五人入っても余裕がある給湯付きの共有ダイニングなんて、一人では贅沢だ。世話をする侍女たちの作業場、浴室、支度部屋、立派な台所も別で備わっている。

(出なくても生活は完結しそう)

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