冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
そのために与えられた建物っぽい、とミリアは一人推測した。

お付きになったという数人の侍女たちの説明を聞いて、離宮内を出歩くのは自由、とは理解できた。

初夜の話もなかった。本人が拒否しているからだろう。

ミリアとしてはほっとしたのだが、侍女たちは憐れんでいるようだ。できるかぎりの希望を叶えられるよう王からも許可はもらっていると言ってきた。

(そういうことなら、話が早いかも……?)

それならと思い、ミリアは世話はあまり要らないこと、出る時以外はそば付きも不要だと伝えた。

望まない結婚で傷心していると取られたのか、すんなり意見は通った。

(よしっ、先行きはいいかも!)

生活魔法を解く時間が確保できそうで、内心ガッツポーズした。

希望が見えてきた。まず、できるだけ顔を見せない方向で外は行かない。半年ここでじっとして過ごす――。

生活に慣れることと状況把握は同時進行すればいいし、楽勝かもしれないとミリアは思った。



◇◇◇



その頃、二十二歳の第二王子アンドレアは軍服のマントを揺らして急ぎ歩いていた。

彼の戻りに気付いた使用人たちも道を開け、屈強な軍人たちでさえ慌てて上官を見送る姿勢を取る。

アンドレアは王宮所属軍司令官だ。

王子としての公務より軍人としての時間が多く、今しがた合同演習から帰還した。

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