冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
彼が物憂げに呟きながら、ミリアの頬にかかった髪を後ろへと撫で梳く。顔を覗き込まれてミリアはどきどきした。

「そこで半日を過ごしたのは間違いないな?」

「え、ええ、そうですね」

乱暴にベッドに乗せたのに、頬を撫でる大きな手は優しくて、よく分からない人だとミリアは思った。

「俺は、君と半日も一緒に過ごしたことがない。あの城で、兄上が君のどんな表情を見て、たくさん話したかを考えると――余裕でなんていられない」

顔を近付けられて心臓がばくばくした。

真剣な目をした彼の顔も美しかった。小窓から室内を照らし出している月光がよく似合う。

「えとっ、奥様のシャルスティーヌ様もいらっしゃいましたよ」

「関係ない」

「それに、王太子殿下は結婚されていますが」

「でも君はまだ清いままだろう。身も、心も……俺は不安なんだ、君の心に入るのも一番は俺がいいと思ってしまう」

アンドレアが、のしかかっている位置を少し下げた。

彼の頭が胸に近付いて、ミリアは咄嗟に手に力が入った。けれど彼は難なく押さえ付け、ナイトドレスの膨らみの上を甘噛みした。

「いたっ……」

「本当なら、ここも乱して噛みついてしまいたい」

ナイトドレスが、彼の口で形を変えてくしゃりと衣擦れの音を立てた。襟から覗いた白い肌に、続いてアンドレアがキスをする。

彼の赤い目は、熱を帯びていてとても美しかった。

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